ピラティスを始めたばかりの人の多くが、「きつい」「難しい」というお声をよく耳にします。特に運動習慣がない人なら尚更かもしれません。
ただ、きついから「私にはできない」とすぐに諦めてしまうのは、すごくもったいないことだと思います。ピラティスは、ある程度の期間は続けてみないと、正しい効果は実感できないからです。
今回は、指導歴9年目のピラティストレーナーが、運動初心者がピラティスをきついと感じる理由やレッスンを楽しむための3つのポイントをお伝えしていきます。
運動初心者こそピラティスをしたほうがいい
結論からお伝えすると、ピラティスはきついです。正確には地味にきつい感じですね。見た目は優雅なのですが…。
でも、初心者に合わせたエクササイズもたくさんあり、運動が苦手な人や普段まったく運動していない人でもピラティスはできます。むしろ、そういう人こそピラティスが必要だと思うのです。
なぜかというと、ピラティスのエクササイズはすべて、どんな人でも安全に動けるように理論に基づいて作られているからです。加えて、ウェイトトレーニングよりも低負荷のため、体力がない高齢者の方や女性にも向いています。
さらにピラティスでは、正しい姿勢を維持するためのインナーマッスルや体幹の筋肉を意識しながらエクササイズします。体幹を常に使いながら動くことで、関節や筋肉に負担をかけたり、「腰を反りすぎて腰痛になった」ということも少ないです。
私が今まで担当したお客様の9割以上が運動初心者ですが、ピラティスを続けて2、3ヶ月経つと、みなさん見違えるように動けるようになることがほとんど。普段の姿勢を意識している方は、成長がとても早いです。
ピラティスがきついと感じる理由
ピラティスは、運動初心者の方や高齢者の方でも取り組め、安全性の高いエクササイズです。ただ、ピラティスを始めて間もない人は、特に「きつい」「しんどい」と感じやすいことがよくあります。
「ピラティス=きつい」と思われる原因は、主に以下の5つです。
1.普段使わない筋肉を使うから
2.呼吸しながら行うから
3.慣れない動きに戸惑うから
4.体に力が入ってしまっているから
5.グループレッスンを受けているから
ここからは、ピラティス初心者がきついと感じる代表的な理由を詳しく見ていきましょう。
1.普段使わない筋肉を使うから
ピラティスのエクササイズでは、全身のあらゆる筋肉を使います。腹筋や背筋はもちろん、脚や腕、肩、お尻の筋肉など、日常生活では使わない筋肉を使うので、「きつい」と感じる人は多いです。
「筋トレと変わらないのでは?」と思われるかもしれませんが、ピラティスは筋トレよりも、日常生活で使いにくいインナーマッスルを強化することに焦点を当てています。インナーマッスルは、その名の通り、骨に近い部分にある深層筋のことです。
もちろん、アウターマッスルも身体をスムーズに動かすために必要なので、両方ともバランスよく使うことが大切です。ただし、正しい姿勢をキープするためには、姿勢筋とも呼ばれるインナーマッスルが不可欠。
ピラティス では、胴体周り(体幹)のインナーマッスルや、肩甲骨周りにあるマニアックな筋肉たちも刺激します。 これらのインナーマッスルは、ただ運動をしても鍛えることはできないため、衰えやすい筋肉でもあります。
日頃から筋トレや運動をしている方でも「ピラティスは難しい」と言われているくらいなので、運動初心者の方がきついと感じるのは当然のことなのです。
2.慣れない動きに戸惑うから
ピラティスには、一般的な筋トレとは違った動きがたくさんあります。たとえば、背骨を首から腰まで順番に丸めたり、骨盤を動かしながら腹筋を使ったり、ダンスのような動きがあったりとさまざまです。運動初心者の方は頭の中がこんがらがって、戸惑ってしまうことは多々あります。
さらに、筋トレは同じ動きを3セットなど繰り返すことが多いですが、ピラティスでは1レッスンで最低でも10以上のエクササイズを行い、さまざまな動きを習得します。どこかの部位だけを重点的に鍛えるのではなく、全身のバランスを考えて動くことが、姿勢改善につながるからです。
しかも闇雲に身体を動かせばいいというわけではなく、正しい姿勢をとりながら、自分の身体の細部まで意識する必要があります。車の運転と同じで、動きをつかむまでには時間がかかるものです。ピラティスが初心者の方でも3ヶ月くらい通うと、だんだん慣れてきてスムーズに動けるようになります。
3.体に力が入ってしまっているから
体に変な力が入ってしまっていることで、きついと感じる方もいます。特に基礎的な筋力がない人がピラティスのエクササイズを行うと、身体がこわばり、余計なところに力が入りやすくなります。特に力みやすい場所は、肩と首です。
たとえば、胸を丸めながら頭を起こす腹筋系のエクササイズをするとき、腹筋が弱い人は頭を無理やり起こそうとして、肩や首にぐっと力を入れてしまうケースがよくあります。すると、肝心のお腹に力が入らず、その代償として首や肩が痛くなりやすいのです。
また、肩甲骨を上手に使えていないことも、肩や首に力が入る原因です。特に、肩をグッとすくませるような姿勢をしやすい人は、肩甲骨がずっと上に上がっているので、常に肩がガチガチに緊張している状態。
このように、体が緊張していることが、ピラティスがきついと感じる理由のひとつかもしれません。
しかし、初心者の方に向いているエクササイズや、体が力まないようにする方法はたくさんあります。体に力が入りやすい人は、ピラティスのレッスンを受ける際にインストラクターに事前に相談してみてください。
4.グループレッスンを受けているから
最近は、マシンを使ったピラティスグループレッスンが流行っています。グループレッスンのメリットは、マンツーマンで行うプライベートセッションよりも安価で受けられ、気軽に通いやすことです。
ただし、大勢で行うグループレッスンでは、インストラクターが一人ひとりの動きを細かく見ることは難しく、初心者の人は間違ったまま動いてしまいやすくなります。力や勢いだけでどうにかしようとすると、無理な体の使い方をして正しい効果も得られません。
また、マシンピラティスの場合は、マシンの上に寝転がったり、座ったり立ったりさまざまな体勢で動くので、使い方に慣れていないうちは不安に感じてしまうかもしれません。気持ちがザワザワしていると、心地よく動けないですよね。
安全に動くためにも、グループレッスンを受けるときは、なるべく少人数で行うスタジオを選びましょう。
初心者がピラティスを楽しむための3つのコツ
運動初心者の方がもっとピラティスを楽しむためには、受けるレッスンの種類を変えたり、思考を変えることが有効です。
プライベートセッションを受ける
プライベートセッションは、グループレッスンよりは料金が高くなりますが、その人の姿勢や悩みに合わせてトレーニングメニューをカスタマイズしてもらえます。さらに、自分の筋力や体力、その日の体調に応じて柔軟に対応してもらえるのも、プライベートセッションの魅力です。
「初心者だからプライベートは緊張する」というお声を聞きますが、むしろ初心者だからこそプライベートセッションを受けたほうがいいと思います。グループレッスンでは恥ずかしくて聞きにくいことも、プライベートセッションなら聞きたい放題。
姿勢のクセや正しく動けているかもチェックしてもらえるので、効果も高まり、結果が出やすいです。プライベートレッスンを数ヶ月続けると、体の動き方やマシンに慣れ、より安全に楽しく動けるようになります。
できなくても落ち込まない
最初のうちは、ピラティスのエクササイズが思い通りにできないことがあります。たとえば、背骨を動かそうと思ってもスムーズに動かなかったり、特定のエクササイズができなかったり、誰にでも弱点は見つかります。
そんなときに覚えておきたいのが、上手くできないことに落ち込まないことです。グループレッスンを受けている方は、人と比べてしまいやすい傾向にあります。
でも、よく考えてみると、みなさん年齢もバックグラウンドも何もかも違うのですよね。ある人はバレエを3歳から続けていたり、ある人は学生の頃を除いて運動を数十年していなかったり。そうなると、ピラティスをする中で、差が出るのは仕方ないことなのです。
しかし一番大切なのは、自分の体と真剣に向き合い、より良い方向へ整えていくこと。誰かと比べたところで、自分の体は変わらない。ただ、練習を繰り返していけば、体は確実に変わります。でも必死に頑張るのではなく、気長に続けるのが楽しむポイントです。
考え方を転換してみる
「きつい=悪いこと」と思っていると、ピラティスをあまり楽しめないかもしれません。
反対に、新たなことにチャレンジするのが好きで、失敗を恐れない人はピラティスを楽しめます。そういう人は、たとえきついエクササイズでも笑いながら楽しみ、素直に吸収し、どんどん成長していきます。
ピラティスが自分に合わないと思ったら、無理にする必要はないですが、数ヶ月続けてみてから続けるかどうかを決めてもいいかと思います。
きつい=自分の体が目覚めている証拠
こんなふうに思考を前向きな方向に転換してみると、ピラティスに限らず、他の運動も楽しめると思います。私はよく「筋肉痛が来たら喜んでください」とお客様にお伝えしています(笑)。
ピラティスはきついけど楽しい。だから初心者でも続く
ピラティストレーナーの私でさえ、ピラティスはきついと思うことはあります。
うまくできないと悔しい気持ちになりますが、そんな瞬間さえ楽しくて、「自分の身体はどこまでいけるんだろう?」とワクワクしたりもします。
ゲームと一緒の感覚で、すぐにクリアできたらつまらないですよね。そしてピラティスのエクササイズは毎年どんどんアップデートされ、数も覚え切れないほど多いので、飽きることもありません。
人は楽しければ、なんでも続けられます。
この記事を読んだ方が、心も体も整うピラティスライフを楽しめますように!
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